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”生きるために透析をする?”それとも”透析をするために生かされてる?”

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透析が嫌になったことはありませんか?
”いつまで透析を続けなければならないんだろう”
と思ったことはありませんか?
本音では、どれくらいの透析患者が、”もう透析を止めたい”と思っているのでしょうか?

全国での透析見合わせ・終了は、福生病院透析中止事件が起きた2018年前の2年間で1409例あるということです。
医学的な理由などで透析導入を見合わせた(透析非開始)症例は917例、
透析の終了は492例であり、
全国的に見れば、透析見合わせや終了はまれではないようです。

どんなに苦しい状況になっても、最後の最後まで透析しないといけないのでしょうか?
また 透析を中止したらどのような経過をたどるのでしょうか?

 

福生病院透析中止事件(2018年)

透析中止事件といえば、2018年、福生病院事件を思い起こします。
”公立福生(ふっさ)病院(東京都)で女性患者が腎透析を続けるために必要な手術を拒否したことで、透析が中止になり死に至った ”事件。

この事件のその後は、
遺族が病院側に慰謝料を求めた訴訟は、東京地裁で和解が成立したそうです。
≫朝日新聞

この事件は、透析をしている立場の人からみても賛否両論あります。
一口に透析をしているといっても、様々な状況があります。
年齢、体調、合併症の有無、精神状態・・・
ある人にとっては、透析さえ受けていれば、健常者と同じように仕事も出来るし、好きなことも出来る。
また別の人にとっては、様々な合併症を抱えながら、身の回りのこともままならず、
痛み・苦しむだけの透析は苦痛でしかない。
人は、実際にその状況を経験してみないと分からないこともあります。
一概に、透析の中止は絶対ダメ、どんな状況になっても続けるべきとは言えないでしょう。

 

患者が治療を拒否する権利(ダックス・カワート) 

ダックス・カワート(25歳)は、大やけどを負い、病院で当時最新の熱傷治療を受けることになった。
しかし、それは激烈な苦痛を伴うもので、なかでも感染症予防のために全身を漂白溶液のタンクに浸す治療は、モルヒネ麻酔をしていても全身に激痛を覚えるものだったという。
そのため、ダックスはかなり早い段階から何度も治療拒否の意思を医師や看護師に表明したが、まともに取りあってもらえなかった

 ダックスは熱傷により両手の指をほぼすべて失っていただけでなく、両目、鼻、唇、耳なども失っていた。
皮膚移植などによって顔面の修復を行い、14ヶ月後に退院した。彼はしばらく鬱や睡眠障害に苦しみ、二度の自殺未遂も経験したが、その後、弁護士資格を取得し弁護士として成功した。また、患者の治療拒否権を擁護して、多くの講演を行った。

 ダックスは3度の結婚も経験し、本人も認めるように成功した人生を送っていた。だが、それでも自分の熱傷治療に関して治療中止が認められるべきだったという考えは変わらなかった。彼は、仮に治療を我慢して生き延びれば成功する人生が送れるとわかっていたとしても、治療を強制されるのは間違っていたと主張していた。

≫https://news.yahoo.co.jp/byline/satoshikodama/20190602-00128380

 

生きるために透析をするのではなく、透析をするため生かされている?

動ける自由がある人は、生きるために透析をするのでしょうけど、
認知症患者や寝たきりの人は、透析をするためだけに生かされていいるのでしょうか?

長崎腎病院 終末期医療の取り組み

長崎腎病院 病床数 79床
同時透析145床(病棟透析18床+個室透析5床)
≫長崎腎病院 終末期医療の取り組み

2018年までの約10年間で
・本人や家族の意思に基づく透析中止が9例、
・透析をしない非導入が5例
大半が70代以上でがんや重度の認知症の患者。
中止の場合は10日前後で亡くなった。

<透析中止、家族の声>
「中止には納得しています。家族みんなで見送りました」と話すのは、1年半前に80代の父親をみとった長崎市の女性(55)。
慢性腎不全の父は2年ほど透析し、がんの転移もあった。

痛みに苦しみながら、週3日の透析に通うのは負担で「もうきついかな」と感じる一方、「少しでも長く生きてほしい」と、気持ちは揺れた。最終的に「(終末期は)痛みさえ取ってくれれば、透析はしなくていい」という父の考えを尊重し、透析中止を申し出た。
≫「透析中止」九州でも葛藤 「家族で納得して見送れた」「弱者切り捨ての懸念は」 “患者意思”判断難しく2019/3/17  西日本新聞

 

「透析のために生きている?」(要約)
ー認知症患者の透析 長崎腎病院ー2018/11/8

以前は透析困難症(透析中に血圧が急低下し、意識を保てなくなる)が起こると、それ以上の治療は断念していた。

しかし、医療技術が進歩し、衰弱した80代、90代の患者でも昇圧剤などを投与して症状をコントロールし、透析をギリギリまで続けられるようになった。

日本透析医学会によると、80歳以上で透析を受けている患者は2016年末時点で約6万人に達している。統計を取り始めた1982年の182人に比べると、実に300倍以上だ。

<認知症患者の透析>
長崎腎病院では、透析を受けている入院患者70人のうち、9割が認知症だ。
治療を続けているうちに認知症が進行し、透析を続けるかどうかなど本人の意思を確認できなくなってしまうことが課題だという。

認知症の患者は透析の途中、自分で管を抜いてしまうことがある。やむを得ず家族の同意を得て、手袋で拘束した上で透析治療を行っている。

舩越医師は現場のジレンマを打ち明ける。
「医療技術の進歩で、状態の悪い方の透析を継続することになりました。しかし、透析のために生きているというか、生かされているような状況になってしまう」

 

透析中止するとどのような経過をたどる?

どれくらいで亡くなるの?

福生病院事件では、中止決定から7日間後に亡くなっているようです。
海外の事例報告では、透析中止後の平均死亡日は透析中止後の7.8日後
79.1%の患者は、透析中止後10日以内に死亡しているようです。
≫https://zizineta.com/stop-dialysis/

死に至るまでに現れる症状は

透析中止後3日ほどで、息苦しさ、辛さ、不快感
体の中には、水分がたまる
心臓や肺には水が溜まって心不全、肺水腫を起こし、呼吸困難に陥る
尿毒素がたまって意識混乱などの意識障害も起こす。

<死に至るまでに現れる症状>
①全身のむくみ・重篤な呼吸困難
②食欲不振・嘔気・嘔吐・下痢
③貧血・出血
④しびれ・知覚障害・全身倦怠感
⑤皮膚のかゆみ
⑥麻痺・意識障害

 

透析中止および緩和ケアについての透析患者に対する意識調査

どんなに苦しい状況になっても透析をしながら生き続けたいか?
それとも、もう透析を止めてほしいのか?は、人それぞれの考え方があるようです。

透析を続けるのが大変な状況になった場合33.3%が透析中止を希望

<透析中止や緩和ケアについてアンケート調査 2020/12調査>
ー栃木県の透析施設の外来血液透析患者を対象ー

質問 アンケート結果
透析療法を続けるのが大変な状況になった場合,透析中止を希望しますか? 「はい」が160名(33.3%)
「いいえ」が195名(40.5%)
「どちらでもない」が121名(25.2%)
どのような状況で中止したいか? 「意識不明」が135名(84.4%)と最も多く
「人工呼吸器」90名(56.3%)
「寝たきり」83名(51.9%)
「がん末期」79名(49.4%)
苦痛を今抱えているか? 「ある」が107名(22.2%),
「ない」が258名(53.6%),
「どちらともいえない」が112名(23.3%)
苦痛の内訳は? 身体的70名(66.0%),
心理的30名(28.3%),
社会的27名(25.5%),
スピリチュアル15名(14.2%)
緩和ケアの認識については? 「知っている」60名(12.5%),
「聞いたことがある」242名(50.3%),
「聞いたこともない」169名(35.1%)
「知っている」と答えた者のうち,具体的記載 「苦痛の緩和に関連」11名(47.8%),
「末期関連の表現」8名(34.8%),
「がん関連」7名(30.4%),
「治療が不可」,
「中止について」が4名(17.4%)
緩和ケアの必要な時期については? 「今必要」4名(6.6%),
「将来的に必要」42名(70.0%),
「今後も必要ではない」1名(1.7%),
「わからない」13名(21.7%)
緩和ケアが必要な理由 「辛い症状の緩和」33名(71.7%),
「心の辛さの相談に乗ってほしい」16名(34.8%),
「人生の最後をみてくれる」16名(34.8%)
緩和ケアが必要とされる状況 「命に関わる病気」23名(50.0%),
「透析困難」13名(28.3%),
「がんの末期」11名(23.9%)

≫透析中止および緩和ケアについての透析患者に対する意識調査

<アンケート調査の結論>
・透析療法を続けるのが大変な状況になった場合,33.3%が透析中止を希望
・透析患者の22.2%は苦痛があると回答
・透析患者には緩和ケアがあまり認識されていないことが明らかとなった
・緩和ケアは,単なる症状コントロールにとどまらず,患者の意思決定においても大きな役割がある。

 
 

 

日本透析医学会 透析中止のガイドライン

透析中止のプロセスは、慎重な判断基準に沿って行われるようです。

終末期の透析中止で学会が提言発表 - 患者家族の推定意思も尊重 [日本透析医学会]


≫日本医事新報社

≫透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言
(日本透析医学会ガイドライン)PDF

 

無駄な延命治療を避けるための事前指示書の作成

もし、認知症や助からない病気になったとき、
無駄に苦しい延命治療を受けたくない場合には、あらかじめ自分の通院する透析施設に、
自分の希望を伝えておく方法があります。
また 突然の病気や怪我で、自分の意思が表せない状態になったときにも役立ちます。


≫維持血液透析の見合わせに関する事前指示書 透析会誌 2014; 47(5): 269-285
日本透析医学会血液透析療法ガイドライン作成ワーキンググループ
透析非導入と継続中止を検討するサブグループ

事前指示書には、法的拘束力はありませんが
自分の意思を文書に残しておくことで、たいていの医師は患者の意向を尊重してくれます。

事前指示書とリビングウイルの違い

事前指示書と似たような言葉にリビングウイルというものがありますが、
その違いは何でしょう?

事前指示書
アドバンスディレクティブ
(Advance Directive: AD))

 

「自らが判断能力を失ったときに、自分に行われる治療やケアの意向を示す意思表示のこと」

リビングウィルと明確に異なる部分は「意思決定をするときの代理人に指定があるかないか」です。アドバンスディレクティブはリビングウィルに加えて代理人の指定が加わるということです。

リビングウイル
(Living Will: LW)
生前の遺書
「人生の最終段階(終末期)を迎えたときの医療の選択について事前に意思表示しておく文書」
また、「もしものときには「私は、延命措置を望まない」という、包括的な事前指示書です。」

 

透析中止の際、苦しまないために

透析を中止すると、ものすごく苦しい状況になるということですが、
出来るだけ、苦しまずに最期を迎えることが理想です。

緩和ケアを知る

前述のアンケートで、緩和ケアを知らない透析患者もいました。
緩和ケアといえば、末期がん患者の苦痛をとるためのものというイメージがあります。
がんだけでなく、透析中止の苦しみをとるために、誰もが緩和ケアを受けられればいいと思います。
ただ、緩和ケアがどこの病院でも受けられるのか?というと、そうとも限らないようです。
全国どこに住んでいても、緩和ケアが受けられるようなシステムが整うといいですね。

緩和ケアとは?(WHO定義)
緩和ケアは、身体的、心理的、社会的、または霊的な側面を含めて、生命を脅かす疾患がもたらす困難を抱える患者とその家族の生活の質を改善します。
そして介護者のQOLも改善します。

日本では、緩和ケアというと、がんに限られるような言い回しが多いようです。
死に至る病気は、がんだけとは限りません。
透析患者も、もっと簡単に緩和ケアが受けられるようになれば、
透析中止の苦しみも緩和されるのではないでしょうか?
福生病院のケースも、緩和ケアがあれば苦しまずに最期を迎えられたかもしれません。

全国で、緩和病棟のある病院はまだまだ少ないようです。
しかもそこが透析がある病院だとは限りません。
≫全国の緩和ケア病棟(PDF)

 

日本では認められていない安楽死・尊厳死

透析を中止した際、苦しまないで楽に逝けたら理想ですよね。
日本では、安楽死は認められていませんが、
海外では、安楽死が認められている国もあります。
安楽死が認められている国は、
スイス・オランダ・ベルギー・ルクセンブルク・カナダの5カ国とアメリカの5州です。

安楽死と尊厳死の違い(刑法上)

安楽死 助かる見込みのない病人を、本人の希望に従って、苦痛の少ない方法で人為的に死なせること。(『広辞苑』第五版)
尊厳死 「治療不可能な病気にかかって、意識を回復する見込みがなくなっ
た患者に対して、延命治療を中止する」


スイスでは、医師の手を借りずとも苦しみを終わらせることができる機械が認可されたようです。

安楽死装置(サルコポッド)がスイスで認可、2022年にも実用化?2021/12/8

<スイスでは昨年、1300人が医師の幇助で自殺を選んだ。だがこのマシンを使えば、自分自身で死のスイッチを押すことができる>

カプセル内のボタンを押すと、酸素濃度をコントロールするプロセスが始まる。
内部に窒素ガスを充満させることにより、酸素濃度は、通常の大気濃度である21パーセントから、1パーセントまで急速に低下する。所要時間は30秒ほど。

「低酸素症と低炭酸症、つまり酸素と二酸化炭素の欠乏により死に至る。パニックも、窒息するような苦しさもない」
「酸素が1%以下の環境では、意識を失って約5〜10分後に死が訪れる」という。

持ち運びができるため、自分の望みどおりに死に場所を決められる。
「このマシンなら、どこでも望みの死に場所へと運ぶことができる」「のどかな自然の中でもいいし、自殺幇助団体の施設内でもいい」

カプセルは生分解性の木材ベースの材料でつくられているため、利用者が死亡したあとはそのまま棺として使用できる。

≫ニューズウィーク

 医療が、1分でも1秒でも長く、命を持たせることではなく、
いかに、最期を楽に逝けるかにの方向に発展していくといいと思います。

 

まとめ

透析を中止した場合、余命10日です。
どんなに苦しい状況になっても、最後まで透析を受け続けなければいけないのか?
患者には透析を拒否する権利はないのか?

どんな状況でも、透析を受けて生き続けたいと願う人もいれば、
苦しみを長引かせるだけの透析は受けたくないと思う人もいるでしょう。

透析患者は、透析がなかったら、とっくに死んでいる命です。
透析をしながら生きてきた人生は、楽しいことも苦しいことも、たくさんあったでしょう。
もし、透析を導入した時点に戻って、”もう一度、全く同じ透析人生を繰り返せ”と言われたらどうでしょう?

私は、ダックス・カワートと同じです。
透析をしながら、どんなに成功した人生でも、どんなにいい出会いがあった人生でも、
透析導入時点で、もし、透析拒否を選択できるなら拒否を選びます。

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