私たち透析患者は、どのような状況でも週3回の透析通院を欠かすことが出来ません。例え、今は自力での通院が可能でも、諸事情で車の運転が出来なくなったり、公共交通機関を利用できなくなる状況も考えられます。
また透析が長期になるに従い、合併症を発症する確率が高まります。透析アミロイド症により、骨・関節に障害を抱える透析患者は多く、杖歩行、車いす使用になる人も少なくありません。
現在自力で通院出来ている方の中にも、不安を抱えていらっしゃる方もいるかもしれません。透析後の体調不良で車の運転に不安があったり、最寄りの駅やバス停までの歩行中に気分が悪くなるなどのこともあるかもしれません。
目次
透析患者が通院困難になる理由は?
体が不自由になること による通院困難 |
長期透析や高齢の影響で歩行困難になったり、体調不良が続くことで、公共交通機関が使えなかったり、車の運転が出来なくなる |
通院が遠距離による 通院困難 |
自宅から病院までの距離が遠く、時間もお金もかかってしまう |
通院費用が高額になること による通院困難 |
足腰が弱ったり、体調不良状態が続き、公共交通機関が使えないため、タクシーでの通院に多額の費用がかかる |
悪天候による通院困難 | 台風や大雪などで、外出が危険な状況で通院が困難になる |
透析通院困難になった場合の通院方法
透析治療の通院が困難になった場合、病院などの送迎サービスの利用、タクシーなどの利用などが考えられます。
メリット | デメリット | |
病院の送迎サービス | 無料または低料金で利用できる | 最寄りのバス停まで歩行できることが条件であることが多い |
ボランティア団体の 送迎サービス |
自宅玄関まで付き添ってくれる | 地域によってはサービス自体ない所がある |
一般のタクシー | 自宅から病院までの移動が楽 | 料金が高い |
介護タクシー | 介護付きで安心 車いすでも利用可 |
介護申請をして、要介護認定がおりることが条件になる 申請してから介護認定がおりるまでに時間がかかる |
その他、送迎してくれる家族がいれば安心して透析通院することが出来ますが、それもなかなか難しいでしょう。
透析患者の通院実態調査(長崎県)
令和6年8月、長崎県福祉保健部障害福祉課
調査目的:透析患者の通院や生活実態を把握するとともに、透析患者の通院及び送迎支援を検討するための、基礎資料とする
質問項目 | 回答 |
透析患者の年齢は? | ・65歳以上→72.9% ・40歳~65歳未満→25.1% ・40歳未満→0.9% |
透析通院方法は? | ・自分で運転する自動車→35.5% ・家族の送迎や付き添い→18.1% ・透析施設の送迎バス→12.8% ・介護保険サービス→8.3% ・電車・バスなどの公共交通機関→7.1% ・タクシー→6.0% |
透析施設までの距離は? | ・15分以上30分未満→42.7% ・15分未満→35.7% ・30分以上1時間未満→12.6% |
通院のための月の交通費は? | ・交通費はかからない→30.0% ・5,000円未満→17.2% ・5,000円以上10,000円未満→14.3% |
透析施設へは一人で通院していますか? | ・一人で通院している→65.0% ・いつも誰かに付き添ってもらっている→23.9% |
通院に関して困っていることは? | ・自身・家族の運転免許返納後の通院→18.2% ・経済的負担→15.4% ・悪天候時の通院→12.0% |
≫長崎県腎協機関誌こあら第47号(2025/1/1)より
行政の通院費助成制度
透析通院費助成制度を設けている自治体もありますが、そのこと自体あまり知られてないことが多いです。また、それを利用するには条件があります。
(長崎県の場合は、非課税であること、透析通院費が月20,000円を超えた場合支給するなど)
現在通院に高額の費用が発生している場合は、お住いの自治体で透析通院費の助成制度がないか調べてみて下さい。
長崎県 透析患者通院交通費助成事業
対象となる方
次の1)から4)のいずれにも該当する方が対象となります1)長崎県に居住し、腎臓の機能障害を更生するため、医療機関に通院し、人工透析療法による医療の給付を受けている方
2)市町村民税非課税世帯に属する方
3)自立支援医療費(更生医療)の負担上限月額が2,500円である方
※自立支援医療費の受給者証をお持ちでない場合は、前年の収入が80万円以下である方4)1か月20,000円を超えて通院交通費を負担している方
※自家用車で通院している方は、往復の通院距離×月の通院回数×20円で算定した額が20,000円を超える場合に助成対象となります助成内容
1か月の通院交通費が20,000円を超えた場合に助成します
助成額は、20,000円を超えた金額の2分の1です(助成限度額:月額15,000円)
研究:透析患者の通院困難問題
研究:透析患者の通院を困難にする要因
透析患者の通院を困難にする要因
通院手段は? ・自分で車を運転 48.1%
・家族が運転 29.9%
・タクシー 5.2%
・電車・バス 2.6%
・送迎サービス 2.6%
・施設からの送迎 3.9%
・徒歩 1.3%
・その他 1.3%
・無回答 5.2%現在の通院手段が出来なくなった場合他の手段を考えているか? ・家族が運転する車 25.6%
・タクシー 12.2%
・電車・バス 11.0%
・送迎サービス利用 7.3%
・施設入所 4.9%
・何も考えていない 25.6%通院に関しての不安や問題はあるか? ・透析後の帰宅途中に体調が悪くなるかもしれない
・雪道運転病院で困っていること、今後不安なことについて、協力や相談相手はいるか? ・はい 77.9%
・いいえ 11.7%
・無回答 10.4%相談の相手は誰か? ・配偶者 37.4%
・こども 27.3%相談相手がいない理由は? ・身寄りがいない
・どこに相談すればいいか分からない<考察>
透析患者は高齢化していること、長期透析患者の増加で、通院方法の変更は、今度どの患者でも生じる問題である。
年齢に関しては、初老期から前期後期高齢者が全体の91%を占めており、いずれ身体能力、家庭環境などの変化に伴い通院困難になることが予想される<結語>
・透析患者は前期後期高齢者が多かった
・介護保険申請や介護保険サービス導入などの支援体制が必要である
≫透析患者の通院を困難にする要因 大曲厚生医療センター人工透析室
透析患者の通院困難問題と長期入院
透析患者の通院困難問題が解決出来ないと、結果長期入院しか選択肢がなくなります。
自分の通院する透析施設に入院の設備がなかったり、ベッドの空きがない場合、他の病院を探すことになり、問題がより複雑になります。
通院困難な透析患者への対応,及び長期入院透析患者の実態調査
平成 19年 6月,日本透析医会は全腎協と共同で,「通院困難な透析患者への対応,及び長期入院透析患者の実態調査」を行った
▶送迎を行っている施設は 291施設(51%),実施していない施設が 275施設(49%)であり,ほぼ半数の施設が患者送迎を実施していると回答した
▶病院の送迎実施率が低く,有床・無床診療所の実施率が高い傾向にあり,透析の専門性の高い医療施設ほど送迎を実施していると考えられた
▶通院困難から長期入院となる見込みの透析患者の他院からの受け入れ
入院施設をもつ会員に,通院困難から長期入院となる見込みの透析患者が他院から紹介された場合,入院を受け入れているかどうかの質問
・「受け入れる」と回答した施設は 220施設(54%),「受け入れていない」と回答した施設は 184施設(46%)と約半数の施設が,受け入れると回答した▶ 通院困難となった場合の対応
通院透析患者が,下肢筋力低下や麻痺等により通院困難となった場合の対応を質問した.
・「他の医療機関へ紹介する」との回答が 304施設(54%)で,約半数の施設はほかの医療施設への入院を依頼すると回答した.
しかし「貴院での長期入院を受け入れる」と回答した施設も 235施設(42%)存在した.今回の調査により,通院困難から多数の透析患者が長期入院となっている実態が浮かび上がった.今後ますます高齢化がすすみ,より多くの患者が通院困難と
なることが予想される。
▶高齢透析者の身体的特徴 と外来通院透析の困難さ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt1994/28/12/28_12_1551/_pdf/-char/ja
▶外来血液透析患者における血液透析施設までの通院方法と身体活動量および移動動作能力との関連
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt/47/7/47_421/_pdf/-char/ja